時代を先行しすぎた『ミオレット・フォー・ユー』
前回、パラマウントベッドの『新楽匠』を、改めて紹介いたしましたが、まだまだ電動ベッドには歴史に埋もれた名作があります。今回紹介するのは、プラッツが放った野心作とも言える電動ベッド、その名も『ミオレット・フォー・ユー』です。
基本的な機能や構造は『新楽匠』に近いですが、プラッツの場合はそれにプラスアルファを加え、医学的・安全性・操作性・組立設置の配慮を追求し、次世代のスタンダードを目指した一品として、介護ベッドが本来あるべき姿の可能性を世に問うたのです。はたして、その真価とは!?
背・足上げボタンを押すと、自動的に膝から上がり、その後、背が上がりだします。これだけ聞くと、新楽匠と同じじゃねーかと思うかもしれませんが、そのモーションの過程が素晴らしい。
まず、背上げと同時にヒップダウン機構により、自動的に臀部のボトムが傾斜します。これにより、骨盤を起こしズレを抑制。さらにバックオフS機構により、背ボトムを後方に2cmスライドさせながら上半身を起こす背上げで、腹部や背中の圧迫感を軽減します。
とどめは背圧軽減のため、背上げ時は「背抜き機構」、背下げ時は「牽引感(背が引っ張られる感覚)軽減」をランバーの動きで実現。このランバー機構により、背上げ時、背下げ時の背圧、腹圧軽減を実現したのです。
ヒップダウン機構、バックオフS機構、ランバー機構を合わせた一連の動きを、プラッツは『ライジングモーション』と名付けました。この複雑怪奇な一連の動作は、パラマウントが得意とする独自機構『らくらくモーション』を凌ぐインパクトがありました。
ですが、当時はまさに各社が独自の機能を搭載したベッドを開発し、世に送り出していた電動ベッド戦国時代。惜しくも主流にはならず、歴史の影に埋もれてしまった感がありますが、私は個人的に大好きな介護ベッドです。開発者はきっと、利用者の立場に立って、一生懸命開発したのだと思うのです。
文責 佐野 亘
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